熱の在り処 (前編)

今回の配達は少々厄介だ。
配達先はコスタ・デル・ソル、コスモキャニオン、ウータイと見事に大陸を巡ることになった。
ウータイエリアまでの配達依頼はそうそう入らない。
フェンリルで運ぶにはあまりにも遠いため、基本配達圏外だ。
だが今回「どうしても」の理由のある依頼でコスモキャニオンまで足をのばすついでに、思い切って引き受けることとなった。
出発してから今日で3日目。帰宅予定は一週間後。
まぁ、いい。
他ではできないことをするのがストライフ・デリバリーサービスのウリだ。
今のところ旅路は順調だ。
ただ、1つ・・・問題が発生していた。

 

コスモキャニオン付近の岩場でフェンリルを止めた。
この辺りは地形が入り組んでいる。現在地を確認しようと地図を広げた。

(さっきの分岐点がここのはず・・・・・・なら今は・・・)

複雑な表記を眺めて・・・いるつもりでいたが我知らず瞳の焦点がぼやけていく。

 

―――― あぁっ、あっ、あっ・・・!

        クラ・・・ウド・・・・・・ ――――

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・っ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・まただ。

どれくらい時間が経っただろうか。
我に返るまで、長く妄想に浸っていた感覚だけが残る。

(・・・困ったものだな)

自分に呆れてゆるゆると頭を振った。

突然始まるそれは、妄想だけじゃない。
目に焼きつけた、ティファの姿が勝手に脳内でリピートするのだ。
それは時と場所を選ばず、突然やってくる。
前回は先程バイクで走行中の時だった。
まっすぐな道の先を映していたはずの視界は、ティファの喘ぐ顔や綺麗な体の残像で埋め尽くされ、ふと我に返ったときは大きな岩の前でヒヤリとしたものだ。
幸い今のところ事故に繋がってはいないが、この調子じゃそれも時間の問題だ。
ため息を吐いて、このやましい心には不似合いな青い空を見上げた。

 

俺達は、俗に言う「一番盛り上がっているとき」なんだと思う。
まだ肌を重ねた回数は両手の指に収まる程度だ。
俺が家に帰ってきてからを数えると・・・まだ4回。
きっと一生忘れられない、特別な4回だ。
いや、それを言うなら、初めてのときから全て。
とりあえず、俺はそれをここで止めるつもりは、もちろん、ない。

まだまだ抱き足りなくて、最近は仕事をしていても常に注意力散漫だ。
暇さえあればティファを抱きたいと強く思っている自分に気づく。
ただ、家には子供達がいるため、いつでも好きなときに・・・とはいかないのだ。
しかし残念反面、それでよかったかもと思う。
二人がいなければ今の俺は歯止めが効かず、獣のように毎晩ティファを求めてしまいそうだから。

また、それに拍車をかけるような事実がある。
それはティファが回を追うごとに、とても・・・濡れやすくなってきたように思うことだ。
初めのうちはティファの反応から痛みや喜びというものを感じとっていた。
最近はだんだんと、それに快楽が加わってきているのを感じる。
ティファのあの反応、あの表情。
それは俺に歓喜を与え、胸が痛くなるほど愛しいものだった。

毎日欲しい。毎日見たい。
もっと、ティファを悦ばせたい。
もっと、乱れて欲しい。

一番敏感な蕾に指を滑らすときのティファの体の跳ねかた。
――― 気持ちいいか?
聞けない俺に応えてくれるように溢れてくる愛液。
俺以外は耳にできない、いつもより音域の高い、短くて甘い悲鳴。
それがリズミカルに繰り返されるのを、ティファに溺れながら、聞いていた。
あの時、少し角度を変えて上に突き上げたとき、ティファが・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・っ!

・・・・・・・・・まただ・・・。

片手で目を覆った。
全く、キリがない。まるで十代のガキだ。
だいたい、地図での場所確認さえ終わっていないじゃないか。
こんなことでは長い配達日程が更に延びてしまう。
そうなると家に帰るのだってずいぶん先になる。
早く、ティファを抱きたいのに。
・・・と、またこれだ。
日に日にこの症状は悪化するんじゃないかと、嫌な予感がしていた。

 

 

『お疲れさま。今、どのあたり?』

宿で寝支度を終えベッドに横になりながらティファの携帯を呼び出すと、いつにも増して愛しい声がそう言った。

「ウータイのずっと南だ。明日はウータイに泊まることになるな」

『ウータイか。遠いね・・・』

「ああ、遠いな」

『ユフィがいればよかったね。今はWROの手伝いでこっちに来てるから』

「いや、もしあいつがウータイにいてもわざわざ会いにいかないな。会うと色々と面倒臭いからな」

『あ、ひどい』

電話口の向こうでクスクス笑う声がする。

『ユフィが後で知ったら怒るわよ、もう』

「ああ・・・」

俺は生返事をした。
あいつの話はどうだっていいんだ。

『疲れてる?クラウド』

「いや、そうでもない」

『そっか、よかった。明日も運転気をつけてね。大丈夫だと思って油断してるときが一番危ないんだから』

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・クラウド?』

「・・・・・・・・・実は、そのことなんだが」

『うん』

ティファの声にわずかに緊張が含まれた。
事故でも起こしたと思ったんだろうか。

「・・・・・・いや、なんでもない」

言ってどうする。
いつも君の赤裸々な姿を思い出してしまい悩まされていると?

『気になるよ・・・・・・言って』

「本当になんでもない。悪かった」

『怪我したの?』

「いや違う」

『もう!ちゃんと言ってってば。気になって眠れないじゃない』

言おうかな。
実は、少しだけ言いたいんだ。

「・・・・・・わかったよ。実はな」

『うん』

「ティファを思い出して、集中できない」

『・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・・・・そ、そうなの・・・・・・』

「・・・・・・今も抱きたくて、たまらない」

『・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・」

何も言わないティファにだんだん不安になる。
俺は一日中頭の中がピンクだがティファは違うんだろう。
深夜なのも手伝って思わず言ってしまったが、直球すぎてダメだったろうか・・・?

「あの・・・・・・・・・ティファ?」

『う、うん?』

「ごめん、もう寝るよ」

『あ、あのねクラウド』

焦ったようなティファの声。

「ん?」

『・・・・・・・・・ええとね、その・・・・・・。実は、わたしも・・・・・・そうなの』

「え?」

『お、お店開けてるときでさえ、クラウドのこと・・・考えちゃって・・・・・・今日はうっかりお料理焦がしちゃった』

「フッ・・・」

思わず笑ってしまった。 ティファの方はもう小さな事故が起こっていたようだ。

『もう、笑いごとじゃないのよ』

きっと頬を染めながら怒った顔をしているんだろうな。
勝手に口元が緩む。
正直、かなり嬉しい。お互いに思い出していたこと。
まぁ、たぶん内容には少々差があると思われる。
気を良くした俺は調子に乗って、ますますティファを赤くさせたくなった。

「たぶん俺の方はちょっと違うんだ」

『え?』

「俺は・・・・・・」

『うん・・・』

・・・なんて言えばいいんだ?
ただティファを思い出してるだけじゃない。
走行中でさえティファの体のことばかり考えてるって?
ただの変態じゃないか。
・・・・・・怒られる気がしてきた。

「・・・・・・ごめん。やっぱりなんでもない」

『もう!!クラウド!』

 

ティファはたぶん純粋に俺を想ってくれていたんだろう。
それに比べて俺はどうだ。
俺だってティファが愛しい。愛しいからこそ思い出してる。
だが、今の俺はただティファの顔を思い浮かべるだけじゃ、だめなんだ。

 

 

 

 

 

NEXT

 

 

 

悶々してるクラウドが書きたかったんです。
そう、悶々モンモン悶々と。
きっと彼はそういう時期があると思います。一番血気盛んな時代がグレーだったから。
しかも相手は昔から想ってきたティファ。
そりゃもう失ったものを取り戻すかのように矛先がグワーっとティファに向かっていくと思います。
変態が来るぞー!ティファ、逃げてーー!!

裏側の小説だけど前編はぬるいので表にも置いておきます。

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