One‐Shot (前編)
「頼む、ティファ。本当に一枚だけでいいんだ」
「嫌ったら嫌!絶対、イヤ!!」
深夜の寝室。
ティファはベッドの上で裸の体にシーツを巻きつけ、クラウドから逃げるように壁際まで後退していた。
その前には、右手に携帯電話を手に持ち困惑するクラウド。
その携帯は、あろうことかカメラが起動していた。
「ティファ・・・」
懇願の表情を浮かべるクラウド。
「嫌だってば!もう、信じられない!見損なったわクラウド!」
ティファは床に落とされていた衣服をむんずと掴むと、走るように部屋を出て行った。
「なっ・・・!ティ、ティファ!」
取り残されたクラウドはすぐに後を追うことも出来ず、一人ベッドの上で固まっていた。
「・・・やっぱり・・・ダメ、だよな・・・」
ため息をついてうな垂れるクラウド。
――ことの発端は、数日前に遡る。
北の大空洞付近で新種の大型モンスターが多数確認され、だんだんと南下しているとリーブから連絡が入った。
WROの行う駆除と大空洞内部にまで及ぶ調査にクラウドも同行して欲しい、とのことだった。
シドやヴィンセント、バレット、ユフィ、ナナキも参加予定だ。
あの辺りのモンスターは強く凶暴でWROの隊員だけでは対処しきれないことが予想されるため、必ずこの猛者達の内四名は同行するようにローテーションを組む。
任務の期間は、予定では二ヶ月。
戦況が混乱すれば、それ以上になる。
放っておくわけにはいかない重要な任務、もちろん二つ返事で引き受けたクラウドだった。
が、不安の種がひとつだけあった。
そう、それはいわゆるホームシックならぬ『ティファシック』になることだ。
数週間に渡る配達や任務はいままで何度かあったが、その度に悩まされた、ティファシック。
会いたいという気持ちが収まらず、日々の集中力が低下し注意散漫になる症状。
大空洞付近では携帯の電波もまともに入らない。きっと長いこと連絡を取り合うこともできなくなるだろう。
ましてや今回の任務は最低でも二ヶ月ー。
また、充実したティファとの夜の営みがあるため、これをぴたりと止められると始まる禁断症状、むしろこちらの方が問題なのだ。
自分の意思とは関係なく、突然陥るティファとのウフフな止まらない妄想。
今回は気を張る任務のためそんな余裕もないかもしれないが、だからこそ万一陥ってしまった場合、かなりの危険が伴う。
自分だけならまだしも、仲間を巻き添えにしてしまうかもしれない。
それだけは避けなければ。
以前、その症状に陥ったとき旅先で何度も思ったことがある。
それはーー
ティファのエッチな写真が欲しい
笑わないであげて欲しい。
軽蔑しないであげて欲しい。
諸事情につき彼はその辺の精神年齢が10代なのだ。
それで自己処理し毎日頑張れるというなら、持たせてあげてもいいではないか。
――という深刻な事態を背景に、今夜クラウドは携帯カメラ片手にミッションに乗り出したのだった。
(はいチーズ、とは撮らせてくれない、よな)
また、クラウドはおっぱいを出してピースしているようなティファの写真が欲しいのではない。
なんと欲深いことに、情事の最中のティファの姿、あの悩めかしい表情が欲しいのだった。
(これは、不意打ちすることでいいものが撮れるはずだ)
切羽詰まり、どんな反撃にあうか想像もできていないクラウドは、携帯を取りやすい位置にセットしティファをベッドに誘ったのだった。
多少気もそぞろに、しかしいつものように丁寧な愛撫をティファに施すクラウド。
ティファのしっとり汗ばんだ肌を撫で、唾を飲み込む。
(これは・・・色っぽいティファが撮れそうだな・・・)
「クラウド・・・」
切なそうに両手を伸ばすティファ。
数日後には長い任務に出てしまうクラウドに、涙を浮かべ必死にしがみつく。
「んん・・・」
深い深い口付け。
離れるのが惜しくて、長く唇を合わせた。
「好きよ・・・クラウド」
「・・・俺もだ」
間近で見つめ合い微笑むと、それを合図にするようにクラウドが先端を当てがい、腰を進めた。
「ん・・・」
目を閉じ身構えるティファの中へ、ゆっくりと入ってくる熱いクラウドの猛り。
「は・・・あ・・・」
最奥に先端が到着するのを感じ、ティファは喉を反らせた。
動き出さないクラウドにティファがそっと目を開けると、いつもは情欲に揺らめいているクラウドの瞳が、今日はやけに冴えて爛々としていた。
「・・・・・・?」
違和感を感じ名を呼ぼうとしたとき、突然ピストンが始められ、ティファは小さな悲鳴を上げた。
胸を弄ばれながら、体が激しく揺さぶられる。
激しい突きに息を乱しながらクラウドを見上げると、目に焼き付けようとするかのような爛々と自分を見つめる瞳。
(やだ・・・もうすぐ任務で帰れなくなるから・・・?)
羞恥に顔を背けたとき、蕾を優しくすり潰してくる指先にティファは体を強張らせた。
「ん、ひっ・・・!」
思わず快楽に歪む顔。
「あぁ・・・可愛いよ、ティファ・・・」
クラウドのうっとりした声に、急に恥ずかしくなる。
「んっ・・・」
唇を噛み締めて顔を背けた。
そのとき、コト、と硬質な音がした。
続き、携帯を起動する音。
(こんな・・・動きながら携帯いじるなんて)
クラウドらしからぬ行動に驚いて目を開ると、目に入ってきたのはこちらに向けられている携帯カメラのレンズ。
「え・・・?」
揺さぶられながら、ティファが固まる。
「ティファ・・・さっきの顔・・・」
蕾が更に強くすり潰され、思わず眉尻が下がったところでフラッシュが焚かれた。
「い、や!!」
とっさに携帯を振り払うと、一瞬後に響くシャッターの音。
既の所でカメラはティファを捉えることはなかった。
あまりの出来事に息をのみ、ティファは無言でクラウドの胸を押しのけると繋がりを解いて鋭く睨みつけた。
「何するのよ!!」
「ティ、ティファ・・・」
泣き出しそうな、怒りに満ちたティファの瞳に目を瞬き狼狽するクラウド。
「す、すまない、そんなに嫌がるなんて」
「あたりまえじゃない!バカ!!」
「ティファ・・・しばらく会えなくなるだろ?だから、ティファの写真を撮りたかったんだ」
「だからって・・・なんでこんな時の・・・!」
「この時のティファが、欲しいんだ」
粘り強く頑張るクラウド。
「俺も男だから・・・我慢の限界がくる。そのときのために・・・」
「嫌。わからない」
頑なに首を横に振るティファ。
――そして、冒頭に戻る。
それから二日後。
明日に出発を控えたストライフ家の空気は冷え冷えとしていた。
朝から会話もなく、おしゃべりなデンゼルとマリンでさえ口を噤んでしまう重い空気。
いつも和かで明るいティファが無表情でキッチンに立っている。
(昨日からこんなだ。絶対、クラウドが何かやらかしたんだよ・・・)
デンゼルは目の前に座り大人しくコーヒーを啜っているクラウドをじっとり睨んだ。
視線に気づき、クラウドは肩を竦めるとため息を吐いた。
「もう!クラウド、何してティファのこと怒らせたの?」
耐えきれなくなったマリンがクラウドに詰め寄り、クラウドは思わず咽せこんだ。
・・・絶対に、言えない。
「二人とも、ごはん食べ終わったなら早く学校行く準備しなさい」
抑揚のないトーンの低いティファの声。
(相当怒ってる・・・)
デンゼルとマリンは青ざめて、言われた通りそそくさと部屋へ戻って行った。
「・・・・・・・・・」
二人きりになり、ますます音のなくなるリビング。
深呼吸するとクラウドは意を決して立ち上がり、刺激しないよう静かにティファに歩み寄った。
「なぁ・・・そろそろ許してもらえないか・・・?」
「・・・・・・・・・」
無言で洗い物をするティファ。
「明日には出発だ。こんな状態のまま行くのは、辛い」
「・・・・・・自分のせいでしょ。知らない」
洗い物も途中なのにティファは手をタオルで拭くと、クラウドを避けるように二階へ上がっていってしまった。
がっくりうな垂れていると、背後に人の気配。
驚いて振り向くと、忍者娘が一人立っていた。
「お〜ろ〜?予定より早く来てみたら、なになに、ずいぶんケンアクなムードじゃん。アンタ次は何やらかしたの?」
ニヤニヤ近づいてくるユフィに、クラウドはうんざりと目を回した。
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ユフィは状況を悪化させるのか、それとも好転させてくれるのか?
クラウドはティファのエッチな写真を手に入れることはできるのだろうか!?
後半もすぐにアップできそうです。
最近書きたい欲求マックス!明け方の5時まで携帯でポチポチ作ってます。眠い〜!
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