熱の在り処 (中編その6)

「行ってきまーす!」

早朝の薄暗い空の下、マリンとデンゼルが声を揃えて手を振った。

「気をつけてね!ちゃんとバレットの言うこと聞くのよ」

「はーい」

嬉しそうにバレットのジープに乗り込む二人は、大きなリュックを背負って旅行気分満々だ。

「行ってくるぜ。お前たちもたまには子育てから開放されるのもいいだろ。じゃあな!」

バレットは運転席からごつい腕を上げると、ブォンとエンジンを唸らせてあっという間に走り去った。
ジープの後ろ姿に手を振っていたティファは、ほっと息を吐いて手を降ろした。

「行っちゃった・・・。あの子達が一週間もいないなんて初めてだよね。寂しくなりそう」

「大丈夫だ。あいつらの分まで俺が騒いでやる」

「ん?なんかそれ、前にも同じようなセリフ言ったことあったよね」

「・・・・・・あったな」

「ふふふ」

二人は屋内に戻った。
電気の付いていない店内はまだ薄暗かった。

「ちょっと早いけど、クラウド、もう朝ごはん食べる?」

振り返ると、クラウドは意味深な笑みを浮かべていた。

「なに?」

「あのときは・・・何をした後だったっけ?」

「え?」

ティファは考えをめぐらせて、一瞬後真っ赤になった。
と、突然クラウドがティファに抱きついた。

「!?」

「やっと二人きりになれた」

「ちょっと、クラウド・・・んん」

いきなり深いキス。
無理やりこじ開けられた唇の中に、深く侵入してくるクラウドの舌。
突然過ぎて、ティファの気持ちが追いつかない。
覆いかぶさるようなキスに、ティファは後ろによろめいた。

「あっ」

ドン。
後ろの壁に押し付けられる。

「ごめん」

軽く打ったティファの後頭部を撫でると、再びキスを再開するクラウド。
ティファは顔を背けて、唇を離した。

「もう!全然悪いって思ってない」

「だって・・・久しぶりなんだぞ」

「それとこれとは別でしょ!それに、久しぶりって言ったって・・・」

「キスなら昨日もした。だけど二人きりになれたのは・・・」

「・・・・・・」

「俺はずっと・・・。正直、今までかなり辛かった」

「・・・・・・」

「抱きたい、ティファ」

「・・・・・・・・・」

耳まで真っ赤になって俯くティファ。
好きな人の性欲の対象が自分であること、それは女として幸せなことだと思う。
ティファだって嫌なわけではない。むしろ嬉しい。
嬉しいけれど、あまりにも直球過ぎると困惑してしまう。
こんな、子供達がいなくなったとたん、だなんて。

「・・・・・・い、いま?」

「うん」

「だってまだ・・・朝だよ?それに、もう少ししたらクラウド仕事だし・・・・・・」

「急ぎはないから大丈夫だ。それに、ちゃんと“明後日”まで待っただろ?」

待ち切れないかのようにキスを迫るクラウド。
強引に唇を割られねっとりと舌で舌を絡めとられると、だんだんと思考が停止し始めるのをティファは感じた。
乳房を押し上げてくる手を、ティファはなんとか掴んで止めた。

「こ・・・ここじゃ、いや」

「・・・・・・わかった」

 

興奮に少し息を弾ませながら、クラウドはティファの手を引いて寝室に向かった。

心なし早足で階段を登るクラウドに引っ張られながら、ティファの胸は早鐘を打ち始めた。

今から、またあの行為をするんだ。
ティファは思わず胸の前で片手を握り締め、深呼吸をした。
まだ慣れたとは言えないけれど、「感じる」ということがどういうことか少しずつわかってきた。
痛みや違和感の中にはっきり存在し始めた、“気持ち良さ”。
たどたどしかったクラウドの手つきもだんだんと、優しく、だけど力強くなってきた。
期待と不安と恥ずかしさで、ティファはこの場から逃げ出したい衝動にかられた。

寝室に、二人は手を繋いだまま入った。
ベッドに腰掛けたとたんに始まるクラウドのキス。
すぐに押し倒され、指を絡めて抑えつけられた。
耳の裏から首すじにかけて舌と唇が這う。
すでに片方の胸はゆっくりと揉み上げられている。

(もっと、ゆっくりキスしたいのに・・・)

ティファは早急に体を求められる感に、少し切なくなる。

(・・・ちゃんと言わなきゃ・・・)

「クラ・・・・・・んんっ」

口を開いたとたん、クラウドの唇が唇を塞いだ。
息が出来ないほどに荒々しく。
体が欲しいと言わんばかりのキス。

「ん、ふ・・・・・・・・・ん・・・ん・・・」

くぐもったティファの息遣いに興奮したクラウドは、無遠慮に胸を揉みしだいた。
硬いレザー素材のティファの服がもどかしくて、クラウドは中央のファスナーに指をかけた。
うっすら涙を浮かべた瞳でそれを見つめるティファ。

ジジー・・・

小さな音をさせて最後まで開くと、手を差し入れて白いタンクトップ越しに柔らかな乳房に手のひらを押し付けて、揉み上げた。

「はぁ・・・」

思わず震えるため息を吐いたクラウドは、慌てて唇を結んだ。
恥ずかし気に頬を染めたティファの表情がたまらなくて、クラウドはまた首すじに吸い付いた。
ティファの背に手を回しブラジャーのホックを外すと、そのまま滑らすように中に手を差し入れて胸を掴み、指で乳首を掠めた。

「あっ」

ティファの上ずった高い声に煽られるように、指先で乳首を優しくすり潰した。

「あっ、あ・・・」

いつも体にあるのが不思議に思うくらい、今はやけに敏感に刺激を感じ取る乳首。
ティファは、脚の間がじっとりとしてくるのを感じた。

(少し前はこんなにすぐ、ならなかったのに・・・)

ティファは自分の体の変化に戸惑った。
快楽を覚え始めた体が、勝手に準備を始めてしまうようだった。
心ではまだ触れて欲しくないと思っているのに、体が求めてしまっているような錯覚。
ティファは唇を噛み締めた。

(お願い、もっとちゃんと・・・ゆっくりキスして)

ちゃんと心まで解きほぐしてから、体に触れて欲しい。

そう願うティファに気づく気配もなく、クラウドは勢いよくタンクトップとブラジャーを捲し上げると、じっと胸を見つめた。

「やっ・・・見ないで」

「すごく・・・勃ってる」

「いや!」

ティファは腕で胸を隠した。
その腕を掴まれると頭の上でベッドに押し付けられ、拘束される。
間髪入れずに胸にクラウドがしゃぶりつく。

「あっ!やめっ・・・!」

抵抗しようとしても、思った以上に力強く抑えつけられていて、腕が外せない。
乱暴に、強く吸われたり、激しく舌でなぶられた。
クラウドは舌で攻める合間合間に、魅入られたように胸を見つめていた。

「・・・そんなに、見ないで」

自由の効かない今の状況も相成ってか、見られたくないと思えば思うほど、勝手に乳首が硬くなるのを感じた。
クラウドは息を荒くして、それを再び舐め上げた。

「んっ・・・!」

「こんなに尖らせて・・・やらしいな、ティファは」

「・・・・・・」

心がまだ解されていないのに、そんなセリフを聞かされても恥ずかしいだけで、何も感じない。
こんなのじゃなく、いつもの優しいクラウドの方がずっとずっと好きなのに。
ティファは涙を浮かべて、眉をひそめた。

「その顔・・・・・・そそられる」

勘違いしたクラウドは、ティファの耳元で囁いた。

「もう、欲しいのか?」

違う。
全然、違う。

ティファは唇を噛み締めて顔を背けた。
再び愛撫を始めるクラウド。
脇腹から胸へ舐め上げ、頂きに達すると激しく舌を上下左右に動かした。
下品な舌使いに、ティファはだんだんと嫌悪感を抱き始めた。
クラウドは、ハーフパンツの裾から手を差し入れ、いきなりあの場所に触れた。

「・・・・・・っ」

「濡れてる・・・」

嬉しそうに見上げるクラウド。

「正直に言ってくれ、ティファ。もう・・・挿入て欲しいんだよな?どこに挿入て欲しいか・・・言ってくれ」

一人で暴走するクラウド。
耳元で聞く荒い息づかいに、耳を塞ぎたくなった。
どんどん冷めていく気持ち。
もう、続けられない。
ティファは無感情な瞳で、クラウドを見返した。

「・・・・・・・・・」

情欲で揺らめいていたクラウドの瞳が、はたと何かを感じとって焦点がはっきりとしていく。
冷水でも浴びたように、我に返るクラウドの表情。

「・・・・・・ティファ?」

だいたいのことを察したような、クラウドのおずおずとした声色。

「・・・・・・・・・」

ティファは無言で起き上がり、服を整えた。
クラウドはおとなしく体を離し、戸惑っていた。

「・・・こういうのは、嫌なの。ごめんなさい・・・」

それだけ言うと、ティファはゆっくり立ち上がると目も合わさず部屋を出ていった。
数秒後、ティファの部屋の扉が閉まる音が聞こえた。

一人残されたクラウドは、言葉もなくその場で固まっていた。
徐々に、後悔の念と、一人で暴走していた気恥ずかしさが押し寄せる。

「・・・・・・・・・」

クラウドは頭を抱えてベッドに座り込んだ。

やってしまった。
あまりに興奮して、自分本位で好き勝手してしまった。
卑猥な言動に・・・引かれてしまったのだ。
ティファが喜ぶはずがないことは少し考えればわかることなのに。
・・・これも長々と続いた妄想のせいだろうか。

ティファが腕をすり抜けて行ってしまった感覚に、寂しさが込み上がる。
せっかく今日からティファと二人きりの一週間が始まるというのに、初日から目に余る大失敗をしてしまった。

「はぁ・・・」

クラウドは大きくうなだれた。
とにかく、まずは謝ろう。
でも、はっきり拒絶されたばかりではすぐに顔を合わせる気にはなれない。
クラウドは決意が固まるまで、ベッドに座り続けた。

 

 

10分後、ティファの部屋の扉を控えめにノックした。

「・・・ティファ?」

呼びかけると、少ししてから静かに扉が開いた。
顔を覗かせたティファの目の淵が、うっすらと赤くなっていた。

・・・泣いていたのか。

ズキン。

胸が、痛んだ。
心から後悔した。

そっと腕を伸ばしても拒絶の反応が見られなかったので、そのままゆっくりティファを抱き寄せた。

「・・・ごめん。本当に、ごめんな」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・嫌だよな、あんなの。俺・・・つい、興奮して」

「・・・・・・ううん、わたしが悪いの」

「そんなことない」

ティファの何が悪いんだ。
抱きしめる腕に力を込めた。

「わたし・・・ちゃんと言わなかったから」

「・・・何を?」

「・・・・・・・・・」

答えないティファの顔を覗き込むと、再び涙が滲み始めた。

「ティファ・・・」

「・・・もっと、ちゃんとキスしてくれなきゃ・・・・・・寂しくなるの」

「・・・・・・・・・」

クラウドは後悔に眉を寄せた。
確かに、寝室に入るなりキスもそこそこに体を弄ってしまった記憶がある。
もちろんキスはしていたけれど、奥に奥に舌を伸ばすような、そんな荒々しいキスしかしていない。

「あと・・・いやらしい言葉を言われたり、言わされるのは・・・いや」

「・・・・・・・・・・・・・・・うん」

正気に戻った今言われると、顔から火が出る思いだった。
かなり、恥ずかしい。

「わかった・・・もうしない」

叱られた子犬のようにしゅんと目を伏せるクラウドを見て、
ティファはクスリと笑った。
すっかり落ち込んでしまったクラウドの胸に頬を寄せて、自身が落ち着くのを待つと、ティファは顔を上げた。

「朝ごはん、食べようか?」

「・・・うん」

ティファは、子供みたいだと思いながらクラウドの手を引いて階下へ降りた。

 

 

 

 

 

NEXT

 

 

初日にまさかの大失敗でした。さすがにクラウドが気の毒です(笑)
男女の意識の違いが少しは書けたかなーと思います。女性はちょっとしたことで気持ちが冷めたりしますよね。
奥手なティファはまた人一倍繊細そうだから、クラウドも大変だな〜。でも今回はクラウドが悪いです。
少し乱暴なのも言葉攻めも、ティファがもうちょっと慣れてからにしましょう(笑)

次回はこの日の夕方からお話が始まる予定です。
もう今日は誘えないよなぁ・・・どうしよう。
わたしもクラウドと一緒に頭を悩ませそうです(笑)

 

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